FIP 猫伝染性腹膜炎
FIPはもう不治の病ではありません。諦めずに当院までご相談ください。
猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫腸コロナウイルス(FFCV)という本来は腸管内に感染して下痢を起こすウイルスが体内で突然変異を起こして全身に感染を起こしてしまう病気です。
体内に侵入したウイルスは全身の血管炎や肉芽腫炎症を起こしてしまいます。発症後の死亡率は高く、かつては効果的な治療薬はなかったため「罹患したらほぼ確実に死亡する」と言われた不治の病とされていました。
しかし2018年を皮切りに昨今の新型コロナウイルス感染症(CoVID-19)のパンデミックもあり、ヒト医療においてもコロナウイルス感染症の研究が進み、多くの治療薬が実用化されてきています。これらの薬剤は猫のFIPにも効果が実証されており、かつては確実に亡くなるといわれていたこの病気も、治せる疾患に変わってきました。またISFM(国際猫学会)においても診断・治療のガイドラインも発表され、より安全に治療ができるようになってきました。
そのような背景もあり、FIPにかかった猫の命を救いたいという思いで、当院でもFIP治療を行っております。
FIPの分類・症状
変異したウイルスは免疫に関与する白血球の一種のマクロファージに感染して全身に広がります。
広がったウイルスは大きく分けて
2通りの病態を示します。
① ウェットタイプ
腹腔内や胸腔内の血管で炎症を起こしてしまうことで起こります。
炎症を起こした血管から体液が腹腔や胸腔内に滲みでてしまい、胸水や腹水が溜まります。
また、眼の血管で炎症を起こすとブドウ膜炎という眼内の炎症を起こします。
② ドライタイプ
各種リンパ節でウイルスが増殖して肉芽腫という塊状の病変を形成します。
主に腹腔内のリンパ節や腎臓に病変を形成します。
③ 混合タイプ
①と②のタイプの両方が併発するタイプです。
その結果、元気や食欲の低下、体重減少、発熱、目や皮膚・尿が異常に黄色い、お腹が膨らんできた、眼の充血・濁りがある、神経症状がある、呼吸困難などの症状を示します。
これらの症状が複数認められる場合にはFIPの可能性があります。特に2歳未満の猫や多頭飼育をしている、最近大きな病気や飼育環境の変化など強いストレスがあった場合には注意が必要です。
検査・診断
ひとつの検査で確定診断を出せる疾患ではないため、様々な検査を組み合わせて他の病気の可能性を排除しながら診断を行います。
血液検査
血液検査では貧血や白血球数の変化、黄疸の有無、高グロブリン血症、炎症マーカーであるSAAの上昇などを確認します。
画像検査(レントゲン、超音波)
胸水や腹水の貯留の有無、リンパ節や腎臓などの肉芽腫の形成や腹膜炎の有無を確認します。
腹水や胸水が溜まっている場合、画像のように白く映ります。
胸水・腹水検査
FIPの腹水はタンパク質を多く含んでいるので、粘調性の高い特徴的な液体が貯留します。また、FIPの症状のひとつである黄疸が出ると黄色い腹水・胸水が溜まります。
PCR検査
腹水や胸水、血液を用いてPCR検査を行います。腸管や糞便以外からコロナウイルスが検出される場合、FIPである可能性が高いと考えられます。ただし陰性だからといってFIPを否定できるわけではありません。
FIPの診断は一つの所見だけで判断はせず、背景・症状・各種検査所見などを総合的に判断して、FIPと診断します。
当院では、「パズルのピースを組み合わせるように」診断をいたします。
治療について
治療対象
FIPと他院で診断された・またはその疑いがあるといわれた猫。
診断がついていなくても構いません。FIPは治療をしない場合の致死率が100%に近く、平均の生存期間が9日間ととても短い病気です。
そのため、より早く治療を開始したほうが救命率が上がりますので、なるべくお早めにご相談ください。
また、薬剤の数に限りがありますので、ご来院に一度ご連絡ください。
治療方法
原則84日(14週間)の治療期間が必要です。症状が安定するまで入院治療が必要になることもあります。また、状況によっては治療期間が延長になる場合もあります。
当院では症状に応じてレムデシビルの注射剤とモルヌピラビルの内服を組み合わせて治療を行います。モルヌピラビルの内服を使用することで従来の費用より安価で治療が可能になりました。
費用の目安(治療期間総額)
体重 | 軽症例 | 重症例 |
---|---|---|
1㎏前後 | 17万円~ | 40万円~ |
3㎏前後 | 20万円~ | 50万円~ |
5㎏前後 | 20万円~ | 60万円~ |
※治療期間や入院の有無・日数によって異なります。
お早めにご相談ください
FIPと他院で診断された、またはその疑いがあるといわれたら、診断がついていなくても構いません。
時間が経過するほど救命率も下がりますので、なるべくお早めにご相談ください。
※薬剤の数に限りがありますので、ご来院前に一度ご連絡ください。
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