
手術について
● 動物に優しい手術を
プリモ動物病院では、動物にとって優しい手術を行うために、一頭一頭それぞれに対して、麻酔管理を含めた手術計画を立てています。安全で確実な手術を行うことはもちろん、動物自身にも負担の少ない手術となるよう、痛みのケアも十分に行っています。

一般的な手術の流れ
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手術前

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麻酔・手術にあたってのリスクを洗い出します。
術前検査 1手術前検査として、一般身体検査(問診、視診、触診、聴診)、一般血液検査、胸部レントゲン検査を実施しています。手術を行うにあたっては、手術自体のリスクや、麻酔のリスク、術後のリスクなど様々なリスクが存在し、一見元気そうな動物であっても、できるだけ事前にリスクを把握することが大切です。
※一般血液検査:CBC(全血球計算)、一般生化学検査(8項目) -
点滴など、より安全に手術を行うための準備を行います。
術前準備 2手術前の準備として、点滴のための血管の確保や、抗生物質および消炎鎮痛剤の先制投与を実施します。麻酔においては循環器、呼吸器の管理が非常に重要になりますが、その中でも循環器の管理には点滴のための血管の確保が必要です。その為、たとえ短時間の麻酔でも、必ず点滴用の血管を確保して手術に臨んでいます。
また、手術の前に抗生物質や消炎鎮痛剤を投与することで、手術中に生じる悪い反応を低減させることができます。特に痛みに対しては、さまざまな種類の消炎鎮痛剤を準備し、その子に合った薬剤を選択しています。 -
鎮痛剤や鎮静剤を投与します。
麻酔前投与 3麻酔実施前には、ペットの不安を減らし麻酔による循環器の抑制を抑えるために、神経遮断薬や抗不安薬、鎮静薬など数種類の薬を投与しています。
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手術中

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気管チューブを挿入するために麻酔薬を投与します。
麻酔導入 4手術は基本的に気管チューブを喉に挿入して、気道をしっかりと確保したうえで行います。気管チューブの挿入前に麻酔薬を投与し、動物を眠らせた後で気道を確保します。麻酔薬は一般的に安全性の高いプロポフォールを使用しています。
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人医療でも用いられる安全性の高いガス麻酔で手術を進めます。
麻酔維持 5長時間の麻酔の場合、人医療でも用いられる安全性の高いガス麻酔で手術を進めます。状況に応じて鎮痛薬を持続定量点滴し、絶え間ない痛みのケアを行います。また、痛みのケアを十分に行うことは麻酔薬の量を減らすことにつながり、手術の安全性を高めることができます。手術中は心拍数や血圧、体温、呼吸数などのバイタルサインをモニターで常に監視、また、獣医師・スタッフが聴診・触診・視診を行うことで、異常に対して即座に対応しています。
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痛みの少ない手術になるよう、
安全かつ万全なチーム体制で手術を行います。手術 6手術は執刀者の他に1人以上の助手と麻酔医が加わり、多人数で安全かつ効率の良い、チームによる手術を実施しています。特に骨折などの整形外科、椎間板ヘルニアといった神経外科は専任のスタッフが執刀し、難易度の高い手術は熟練したスタッフが集まり行っています。
また、手術中は麻酔がかかっているとはいえ、痛みによる生理反応は起きています。当院ではそういった「目に見えない痛み」に対しても積極的にケアすることで、より動物の体の負担にならないような手術を行っています。
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手術後

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鎮痛剤の効果で、麻酔薬が切れても暴れることなく、
穏やかで安定した覚醒を行います。覚醒 7手術が終了して、麻酔が覚めるまでの間を覚醒期間といいます。麻酔からの覚醒とともに、動物は痛みを感じはじめ、普段と異なる場所や見慣れない人間に囲まれて不安がるようになります。そのため覚醒時には鳴く、暴れるということがあるのですが、当院では覚醒時にも鎮痛剤を継続使用し、不安のない穏やかな覚醒となるようケアしています。
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こまめなケアと、なるべく早期の退院ができるよう配慮しています。
術後管理 8手術後も全身的な炎症反応、循環動態の変化など、体の中では様々な生体反応が生じています。そのような変化に対応できるよう、手術後も入院中にこまめなチェックを行い、また術後の安定性が確認できれば速やかな退院ができるよう配慮しています。
● 麻酔の安全性について
手術における危険性は麻酔管理によるところが非常に大きいと言われています。動物という生き物を取り扱っている以上、100%安全な麻酔管理は不可能です。しかし、100%になるべく近づけるよう、当院では必要な術前検査をすべての動物に対して行っています。さらに数種類の鎮痛剤を組み合わせることで(マルチモーダル鎮痛)、麻酔薬の使用量を減らし、手術における生体の負の反応を軽減させることができます。 麻酔に関する研究にも取り組んでおり、より安全性の高い麻酔管理を実践できるよう努めています。
● 麻酔モニタリング
麻酔中は心拍数や呼吸数、動物の反射、可視粘膜や瞳孔の状態といった目に見えるものの確認はもちろん、モニター機器を用いて心電図や血圧、体温、血液中の酸素飽和度、麻酔濃度や二酸化炭素濃度を測定しています。これらを用いることで目に見えない生体反応をチェックでき、より安全性の高い麻酔管理が可能となります。
手術後の痛みのケア
「動物も“痛み”によって、様々な有害反応を受けます」
プリモ動物病院では、一頭一頭、さらには病気一つ一つに合わせた最適な鎮痛方法を用いて、より安全な手術、そして動物にとってより安心できる手術を実施しています。

● 痛みによる生体反応
●交感神経の緊張亢進:心拍数増加、血圧上昇、末梢血管抵抗の増加
→心臓への負担が増加
●体内異化亢進&タンパク質分解反応増加
→創傷治癒遅延(傷口の治りが悪くなります)
●血液凝固反応の亢進
→血栓塞栓症リスクの増加(血管が詰まりやすくなります)
●元気・食欲低下
これらにより手術の危険が増加します。
当院では、最新の動物疼痛管理方法を用いて痛みによる有害反応を最小限に抑え、また動物自身の痛みによる不安や恐怖をできる限り取り除くよう努めています。
● 疼痛管理について
先取り鎮痛 (先制鎮痛) |
手術など、あらかじめ痛みが生じることがわかっている場合、鎮痛剤をあらかじめ投与することで、痛みによる有害反応を抑えることができます。 |
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マルチモーダル鎮痛 |
痛みは、痛みを感じるところ(侵害受容器)、痛みが伝達するところ(末梢神経、脊髄)、痛みを認識するところ(脳)を通じて成り立っています。痛みをコントロールするためには、これらの作用部位1ヶ所だけを抑えるのではなく、各部位をしっかり抑えることが重要で、そのためには各部位に作用する鎮痛剤を組み合わせて使用します。これをマルチモーダル鎮痛といいます。 マルチモーダル鎮痛を行うことで、痛みをコントロールしやすくなるだけでなく、各薬剤の使用量を抑えることができるので、一つの薬剤を使用するよりも、鎮痛剤の副作用も少なくできるメリットがあります。 |
硬膜外鎮痛 |
脊髄は痛みに関して重要な役割を持っています。硬膜外鎮痛は脊髄に直接鎮痛剤を投与することで痛みをコントロールする手法です。 硬膜外鎮痛では、普通に投与するよりも鎮痛剤の使用量をかなり減らすことができ、それだけ薬剤の副作用を抑えることができます。 また長時間作用するため、一度の投与で手術後まで十分な鎮痛効果を得ることができます。 しかし、硬膜外鎮痛は硬膜外穿刺という特殊な技術が必要なため、他の動物病院では一般的に実施されているところは少ないようです。 |
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鎮痛剤の種類 |
・オピオイド(麻薬性鎮痛薬):モルヒネ、フェンタニル、レミフェンタニル、ブトルファノール、ブプレノルフィンなど ・非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs) ・α2作動薬:キシラジン、メデトミジン ・鎮痛補助薬:ケタミン、アセプロマジン、ベンゾジアゼピン、ガバペンチン ・局所麻酔薬:リドカイン、ブピバカイン |