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2025年10月1日
犬と猫の病気

高齢犬に多い会陰ヘルニア|症状・原因・治療法と予防のポイント

「会陰(えいん)」と聞いても、どこの部分かわからない飼い主さんも多いかと思います。会陰とは、肛門のまわりを指します。今回ご紹介する「会陰ヘルニア」は、特に去勢していない高齢のオス犬に多い病気です。筋肉の衰えと前立腺の肥大が重なって起こることが主な原因と考えられています。去勢手術をしていればある程度予防できますが、必ず防げるわけではありません。
今回は、「会陰ヘルニア」についてお話します。

どんな病気?

「ヘルニア」とは、体の中の臓器が本来あるべき場所から飛び出してしまった状態をいいます。
「会陰ヘルニア」は、会陰部の筋肉が弱くなり、その隙間から直腸などのお腹の臓器や脂肪が肛門のまわりに飛び出てしまう病気です。多くの場合、肛門を挟んで左右両側に発生します。
その結果、直腸が袋のようにたわんでしまい、便がたまりやすくなります。

主な症状

筋肉の隙間から臓器や脂肪が出てしまうため、肛門のまわりがふくらんで見えるのが特徴です。
そのため便が出にくくなったり、飛び出した臓器が膀胱や尿道を圧迫すると、尿が出にくくなることもあります。
動物病院では、肛門から指を入れて触診をしたり、レントゲン検査で臓器の位置を確認することで診断します。

かかりやすい犬

特定の犬種に多いわけではありません。主に 去勢をしていない高齢のオス犬 に見られる病気です。逆に、メス犬や若いうちに去勢をしたオス犬ではほとんど発症しません。

原因

人間でも高齢になると前立腺肥大が増えるのは有名ですが、犬でも同じことが起こります。前立腺が大きくなると直腸を押してしまい、排便のときに余計な力を入れる必要が出てきます。一方で、高齢になると会陰部の筋肉は自然に薄く弱くなっていきます。さらにホルモンの病気などがあると、その衰えはより進みやすくなります。
このような状態で無理に踏ん張り続けることが、「会陰ヘルニア」の原因になると考えられています。

治療について

治療は基本的に 手術 です。飛び出した直腸を元に戻し、筋肉の隙間をふさぎます。重度の場合は開腹手術をして曲がった直腸をまっすぐにし、お腹の壁に固定することもあります。再発防止や前立腺肥大の改善のため、同時に去勢手術を行うのが一般的です。
ただし、高齢犬では心臓病や腎臓病などの持病があることも多く、麻酔のリスクを考えて手術を迷う方もいます。しかし、排便や排尿ができない状態はとてもつらく、放置するとお腹がパンパンにふくらんで危険です。
術前の検査をしっかり受け、主治医と十分に話し合って最適な治療法を選びましょう。

おわりに

「会陰ヘルニア」は、排便や排尿が難しくなり、とても苦しい病気です。
しかし、若いうちに去勢手術をして前立腺肥大を防ぐことで、ある程度予防することができます。繁殖の予定がない場合は、早めに去勢手術をするのも愛犬の健康を守る選択肢のひとつです。愛犬にとってより良い方法を選んであげられると安心ですね。

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