しかし、「名前は知っているけれど、詳しくはよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、「狂犬病」という病気と「狂犬病予防注射」の大切さについて、正しい知識を学び直してみましょう。
狂犬病とは
狂犬病は、狂犬病ウイルスという病原体によって起こる感染症です。
名前に「犬」とついていますが、犬だけでなく人、猫、キツネ、アライグマ、コウモリ、牛などすべての哺乳類に感染します。
感染してから症状が出るまでには、通常1~2か月ほど、長いと1年以上かかることがあります。しかしこの期間でも、感染した動物の唾液にはウイルスが含まれており、他の動物を噛んだり、傷口や口元を舐めたりすることで感染が広がる可能性があります。体内に入ったウイルスは神経を通って脊髄や脳に到達し、麻痺・興奮・けいれんなどの症状を引き起こします。
一度発症すると有効な治療法はなく、致死率はほぼ100%といわれています。
日本と世界における狂犬病
日本では、昭和25年に狂犬病予防法が制定され、犬へのワクチン接種の徹底や野犬の捕獲が行われました。その結果、昭和31年以降、日本国内での動物における狂犬病の発生は報告されていません。
※ただし、海外で感染して帰国後に発症した「輸入症例」は、直近では2020年に報告されています。
しかし、世界的に見ると、日本のように狂犬病を撲滅できている国はごくわずかです。
現在、厚生労働省が指定する狂犬病清浄地域は日本、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイなど世界でもごく一部の地域に限られています。
世界では現在も、年間約5万9000人が狂犬病で亡くなっているといわれています。
海外との人や動物の移動が多い現代では、いつ日本に狂犬病が再び持ち込まれてもおかしくない状況です。
そのため、日本では法律によって犬への狂犬病予防注射が義務化され、いざというときに感染が広がらないように備えています。
たとえ愛犬が人を噛まなくても、また室内飼いであっても、飼い主には狂犬病予防注射を受けさせる義務があります。
狂犬病の予防注射
狂犬病予防法では、生後91日以上の犬を飼う場合、30日以内に市町村へ登録し、狂犬病予防注射を受けさせることが義務付けられています。これは、狂犬病の感染拡大を防ぐことと、全国で飼われている犬の頭数を把握する目的があります。法律による義務のため、これを怠ると20万円以下の罰金が科される場合があります。
狂犬病予防注射は主に4月〜6月頃に行われます。接種方法は主に次の2つです。
・市町村が実施する集合注射(近年では実施する市町村が減ってきています)
・動物病院での接種
接種すると、
・初回:鑑札+注射済票
・2年目以降:注射済票
が交付されます。
鑑札には市町村名や番号が記載されており、飼い主さんの住所や名前など犬の登録情報を確認できる大切なものです。
鑑札は再交付が可能ですが手続きが必要なため、紛失しないよう首輪につけておきましょう。
また、引越しや飼い主変更、犬が亡くなった場合などは市町村への届出が必要です。
住所変更の際は、犬の登録情報も忘れずに手続きしましょう。

狂犬病のワクチンとは
狂犬病ワクチンは不活化ワクチンと呼ばれる種類です。これは、ウイルスを無毒化し、免疫を作るために必要な成分だけを使ったワクチンです。体内に入れてもウイルスは増殖しないため、発病する心配はありません。しかし、免疫の持続期間が短いため、年に1回の接種が必要です。
混合ワクチンとの違い
「最近ワクチンを打ったから狂犬病は大丈夫」と思っている方もいますが、犬のワクチンには「狂犬病ワクチン」と「混合ワクチン」があります。混合ワクチンは、ジステンパーやパルボウイルス感染症など、命に関わる感染症を予防するワクチンですが、狂犬病は含まれていません。そのため、混合ワクチンを打っていても、狂犬病ワクチンは別に接種する必要があります。
また、他のワクチン接種後は、一定期間あける必要があるため、接種時期は獣医師に相談しましょう。
狂犬病予防注射を受けるときの注意
ワクチン接種の前には、体調が良いかどうかを確認することが大切です。
人でも風邪を引いていたり、熱があるときにはワクチンを打つことが出来ないのと同じく、普段と様子が違うようなら接種は控えましょう。
また、臆病な犬や、他の犬に興奮しやすい犬の場合は、集合注射がストレスになることがあります。
集合注射は多くの犬が集まり、普段とは違う雰囲気になるため、犬同士のトラブルや人への咬傷事故などが起こる可能性もあります。
怖がりな犬や興奮しやすい犬は、動物病院の落ち着いた環境で接種する方が安心です。
狂犬病予防注射が猶予される場合
狂犬病ワクチンは法律で義務付けられていますが、健康上の理由で接種できない場合もあります。
例えば
・ワクチンで強い副作用が出たことがある
・てんかんなどの持病がある
・高齢で体力が低下している
・重い病気の治療中
・妊娠中
などです。
その場合は、動物病院で狂犬病予防注射猶予証明書を発行してもらい、市町村に提出することで、その年度の接種が猶予されます。
※毎年度の手続きが必要ですのでご注意ください。
接種後の過ごし方
ワクチン接種後は、安静に過ごすことが大切です。
特に集合注射の後は興奮していることが多いため、
・激しい運動
・長時間の散歩
・トリミング
・旅行
などは数日ほど控えるようにしましょう。
副作用について
狂犬病ワクチンは比較的安全とされていますが、まれに副作用が起こることがあります。
【よく見られる症状】
・発熱
・元気や食欲の低下
・接種部位の腫れや痛み
特にアナフィラキシー(急激なアレルギー反応)は、接種直後に起こることが多いため、接種後15分~30分は院内か近くで様子を見て、異常が見られた場合はすぐに受診してください。接種後半日ほどは体調の変化に注意し、異常が見られた場合は早めに動物病院へ連絡しましょう。

まとめ
狂犬病は、発症するとほぼ100%死亡する非常に危険な感染症です。
日本では長年発生していませんが、それは多くの飼い主さんが毎年きちんと狂犬病予防注射を行っているからこそ守られている状況です。愛犬の健康を守るだけでなく、社会全体の安全を守るためにも、毎年の狂犬病予防注射を忘れずに受けるようにしましょう。
