Column コラム
愛犬を守るために知っておきたい「レプトスピラ症」のこと

2025年1月、神奈川県藤沢市で犬のレプトスピラ症の感染報告がありました。
もともとは野生動物からの感染が多く、山や川へ出かけた際に注意が必要でしたが、最近ではネズミが媒介することにより感染するケースが増えているようです。
今回は、時には命に関わる怖い病気「レプトスピラ症」についてお話しします。
レプトスピラ症ってどんな病気?
レプトスピラ感染症は、「レプトスピラ」という種類の細菌が原因で起こる病気です。
この細菌は、ネズミやイノシシなどの野生動物の尿中に含まれており、湿った土や水を介して感染します。
最近では自然が多い場所だけでなく、都市部の公園や住宅街でネズミの尿から感染したとみられるケースも報告されています。「うちの子は山や川遊びはしないから大丈夫」と思わず、どんなわんちゃんでもかかる可能性があるということを覚えておきましょう。
また、レプトスピラは人も感染する人畜共通感染症です。
感染した犬の尿や唾液に触れたり、汚染された環境に触れたりすることで感染するリスクが高まります。
人間がレプトスピラ症に感染すると、発熱や頭痛、筋肉痛などの症状が現れることがあります。
重症化すると、腎不全や肝不全を引き起こすこともあるため、注意しましょう。
愛犬の健康を守ることは、ご自身やご家族の健康を守ることにもつながります。
レプトスピラの症状
レプトスピラに感染すると、最初は熱が出たり、元気がなくなったり、ご飯を食べなくなったりといった、風邪に似た症状が見られます。
病気が進むと、
・体が黄色くなる(黄疸)
・血が出やすくなる(出血傾向)
・腎臓や肝臓の働きが悪くなる(腎不全、肝機能障害)
といった、深刻な症状が出てきたり、症状が重い場合は短期間で命を落としてしまうこともあります。
また、回復しても腎臓や肝臓へのダメージが大きいため、後遺症が残ってしまうことも少なくありません。その場合、生涯にわたって治療やケアが必要になってしまうこともあるんです。
どんな子がかかりやすい?
特に次のような場合は注意が必要です。
・キャンプやハイキングなど、アウトドアによく出かける
・田んぼや畑の近く、川沿い、山など、野生動物がいる場所を散歩する
・水たまりや湿った場所が好き
もちろん、都会に住んでいても、公園の排水溝の近くや、ゴミ置き場などでネズミの尿に触れて感染することもありますので、油断はできません。
もし感染してしまったら?治療はできるの?
レプトスピラ症の治療は、抗生物質の薬を使うことが基本になります。症状が重い場合は、点滴や注射で集中的に治療したり、腎臓や肝臓の働きを助ける治療も必要になるため、入院して治療することがほとんどです。
治療費は入院期間や症状の重さにより異なります。退院した後も後遺症の管理のために通院や定期的なお薬が必要になることもあり、飼い主さんの負担も大きくなってしまうことがあります。
予防が一番大切!愛犬を守るためにできること
この病気から愛犬を守るためには、予防がとても大切です。
・感染源に近づけない
ネズミや野生動物がいそうな場所、水たまり、ぬかるんだ土などにはできるだけ近づかないようにしましょう。特に雨の後の散歩はレプトスピラ菌が繁殖しやすい環境となります。水たまりに入らないように注意しましょう。
・散歩後のケア
お散歩から帰ってきたら、足をきれいに洗い流しましょう。
・ワクチン接種
レプトスピラ感染症を防ぐための混合ワクチンがあります。特に、感染のリスクが高い地域に住んでいたり、アウトドアによく出かける場合は、ワクチン接種を強くおすすめします。
※ただし、レプトスピラには複数の血清型(種類)があり、ワクチンに含まれる血清型と感染する血清型が一致しないと効果が期待できないので注意が必要です。
ワクチンにはいくつかの種類がありますので、どのワクチンがいいか迷う場合は、獣医師へご相談ください。
おわりに
レプトスピラ感染症は、時には命にかかわる病気ではありますが、予防できる病気でもあります。大切な愛犬の健康を守るために、日頃の予防とワクチン接種でしっかり対策をしましょう。