Column コラム
シニア犬の介護とケア|老犬に多い病気と予防法

近年は飼育環境の改善や獣医療の進歩により、ペットの寿命はどんどん延びています。 大切な家族である愛犬が、シニア期を迎えても幸せに過ごせるように、私たち飼い主にできることはたくさんあります。今回は、愛犬がシニア期を迎えたときの介護についてお話します。
シニア期に多い病気とサイン
犬も年齢を重ねると人間と同じように「老化」が起こり、体にさまざまな変化が現れます。
✅散歩を嫌がるようになった
✅神経質になってきた
こうした行動の変化は、単なる「年だから」ではなく、病気のサインである可能性があります。
●お散歩を嫌がる
心疾患、関節疾患、甲状腺機能低下症、脊椎疾患など
●神経質になる
白内障による視力低下で、不安や恐怖を感じている など
また、歯周病、腫瘍、糖尿病、前立腺肥大、子宮蓄膿症、認知機能の低下なども高齢犬でよく見られる病気です。これらの病気は高齢犬に限らず若い犬でも起こることがあり、愛犬の変化は病気のサインの可能性があるため、定期的な健康診断を受けることが大切です。
シニア期のケア【食事】
高齢になってくると、消化器に問題がなくても嗅覚の低下によって食欲まで低下することがあります。そのような場合には、フードを人肌程度に温めて香りを出したり、匂いが強く口当たりの良いものを最初の一口だけ手に取って食べさせてあげると、それをきっかけに食べ始めてくれることもあります。
また、一般的に高齢になると運動量や代謝が低下することにより体が必要とするエネルギー量は少なくなってきます。そのため、若いときと同じ食事内容や量では肥満になってしまいます。肥満は様々な病気の原因となるので、愛犬の体重管理に気をつけましょう。
【ドッグフードやサプリメントを活用する】
最近販売されているドッグフードやサプリメントには、犬の老化予防に有効な成分が配合されているものがあります。
・各種ビタミン、コエンザイムQ10…抗酸化作用
・DHA、EPA(不飽和脂肪酸の一種)…脳細胞の機能を高める
・グルコサミン、コンドロイチン硫酸…関節の健康維持
これらは薬と違って即効性は期待できませんが、体を健康に保つ助けになります。また、それぞれの病気に適したフードを病院で購入することもできるので、獣医師に相談しながら取り入れると安心です。
【便秘や下痢など消化器系トラブルへの対応】
年齢とともに消化器機能は低下してくるため、食事の与え方や内容が原因で便秘や下痢を起こすこともあります。
●便秘気味のとき
水を飲む量が以前より少なくなっていませんか?そのようなときには缶詰など水分量の多いフードやドライフードをお湯でふやかしたものを与えてみてください。
●下痢をしやすいとき
一回あたりの食事量を減らし、食事回数(1日5回程度まで)を増やすとよいでしょう。また、脂肪分は消化を遅らせて下痢を起こしやすくするので、その点に配慮されたフードを与えるようにしましょう。
これらの対策を行っても改善がみられない場合は、病気が隠れている可能性があるため、動物病院を受診しましょう。
シニア期のケア【運動】
以前よりも愛犬にお散歩をせがまれなくなって、「歳だからお散歩に行かなくてもいいか」と回数を減らしていませんか?
行きたがらないからといって家の中だけで過ごしていると、寝たきりになる時期が早まってしまいます。筋肉を維持するために運動は必要なので、無理のない範囲でお散歩は続けましょう。
●後ろ肢が弱ってきた
タオルや幅広の布で下腹部を支えるように持ち上げて歩行を補助してあげましょう。歩行を補助する介護用品も販売されていますので、活用してみてもよいかもしれません。
●全く歩けない
日光に当てて外の匂いをかがせたりすることは、脳に良い刺激になり認知症予防にもつながります。抱っこやカートに乗せてお外に連れていってあげましょう。
シニア期のケア【床ずれ防止】
加齢とともに筋肉や脂肪が落ちてくるため、床が硬いと床ずれになりやすくなります。その場合は犬用の床ずれ防止マットを敷いたり、クッションやタオルを用いて体が床と接する部分を柔らかくしてあげてください。
肩や腰など骨が浮き出ている部分は床ずれができやすいので、タオルを丸めたものやドーナツクッションを利用して、下に敷いてあげましょう。姿勢の変更は2時間に1回くらいのペースでしてあげるとよいでしょう。
シニア期のケア【グルーミング/日常ケア】
グルーミングは全身に触ることにより体の変化に気づける大切な機会にもなるので、日常的に行いましょう。
●ブラッシング
被毛の管理以外にも血流が良くなるなどのマッサージ効果があるので、積極的に行いましょう。
●おむつを付けている部分の毛を短くカット
寝たきりの長毛犬でおむつをつけている場合は、皮膚がかぶれやすくなります。おむつを付けている部分の毛を短くカットしておくと清潔に保ちやすく、かぶれにくくなります。
●シャンプーの負担を軽減
全身のシャンプーが負担になる場合は、部分的にお尻や顔周りなどの汚れやすい部分だけ洗ってあげて清潔を保ちましょう。においが気になる場合はスプレータイプのものも販売されています。
おわりに
平均寿命で考えると、犬は人間よりも早くその一生を終えます。なので愛犬がシニア期を迎えることはごく当たり前であり、覚悟しておかなければならないことです。愛犬の老いを悲観せず、幸せな余生を過ごせるように、飼い主側も穏やかな気持ちで過ごすことが理想的です。
また、若い頃からの健康診断やケアの積み重ねが、将来の安心につながります。
寝たきりになってしまった愛犬の「介護疲れ」で悩んでいる飼い主さんも多いことと思います。人間の介護でも言われていることですが、そのようなときには一人で悩まず、動物病院のスタッフに相談したり、同じような悩みを抱える飼い主さん仲間とお話してみることをおすすめします。