Column コラム
しつこい耳の赤みとニオイの原因『マラセチア外耳炎』とは
「外耳炎」はなぜ起こる?身近な原因「マラセチア」について
動物病院にやってくるわんちゃん・ねこちゃんの理由として、常に上位にランクインするのが「耳のトラブル(外耳炎)」です。とても身近な病気ですが、「具体的にどんな病気なの?」「何が原因でなるの?」と疑問に思っている飼い主さんも多いのではないでしょうか。
今回は、犬や猫がかかりやすい「外耳炎」と、その大きな原因の1つである「マラセチア」という菌について、分かりやすく解説します。
マラセチアってどんなもの?
マラセチアとは、カビ(真菌)の仲間で、その中でもある種の「酵母菌(こうぼきん)」に分類されます。
「カビ」と聞くと驚くかもしれませんが、実はマラセチアは、健康な犬や猫の皮膚、耳の中、口の周り、お尻などにも普段から住み着いている「常在菌(じょうざいきん)」です。普段はまったく悪さをしません。
しかし、マラセチアには以下のような特徴があります。
● 脂(あぶら)や湿気が大好物
● 環境が整うと、栄養を吸収して爆発的に増える
● 体力が落ちているときに繁殖しやすい
この菌が増殖することで、耳の炎症(外耳炎)や皮膚の炎症を引き起こしてしまいます。
顕微鏡でのぞいてみると、「だるま」や「ボウリングのピン」のようなユニークな形をしているのが特徴です。現在では、外耳炎の原因の約7~8割にこのマラセチアが関わっているといわれています。
こんなサインに注意!外耳炎の主な症状
わんちゃんやねこちゃんがマラセチアによる外耳炎になると、どのような症状が出るのでしょうか。
イメージしやすいのは、人間の「水虫」です。同じカビの仲間が原因なので、とにかく強いかゆみを伴うのが特徴です。次のようなサインがないか、愛犬・愛猫の様子をチェックしてみてください。
● 後ろ足で耳を激しくかく、頭をぶるぶると激しく振る
● 耳の中から、こげ茶色~黒色の「ベタっとした耳垢(耳アカ)」が出る
● 耳から独特なニオイ(古い油やチーズのような臭い)がする
かゆくて耳をかき続けてしまうと、爪で耳の皮膚を傷つけ、そこから別の細菌が入って二次感染を起こすこともあります。
炎症が進むと耳が赤く腫れあがり、最初は「かゆみ」だけだったものが、やがて「激しい痛み」へと変わります。こうなると、耳の周りを触られるのを嫌がるようになってしまいます。
なぜ増える?外耳炎が起こるきっかけと「体質」
マラセチアによる外耳炎は、「耳の中がジメジメして蒸れているとき」に最も起こりやすくなります。
● シャンプーをした際に、耳の中に水やシャンプー剤が残ってしまった
● 雨の日の散歩の後、耳の水分を拭き取れていなかった
● 梅雨時など、部屋全体の湿度が高い
特に、レトリバーやコッカー、シーズーなどの「垂れ耳」の犬種は、もともと耳の中が蒸れやすいため、マラセチアにとっては絶好の住処になってしまいます。
また、体質的に脂っぽくベタつきやすい皮膚(脂漏症など)の子や、アトピー・アレルギー体質の子は、特に注意が必要です。
アレルギー体質の子は皮膚のバリア機能が弱いため、マラセチアが増えやすいだけでなく、「マラセチアそのものに対してアレルギー反応を起こす(マラセチアアレルギー)」ことも分かっています。そのため、一般的な子に比べて外耳炎をくり返しやすくなります。
動物病院での治療と、お家での正しいケア
一度マラセチアが増えて耳垢がたまると、それがさらに菌の栄養になって悪循環に陥ります。治療の基本は、「菌が増えにくい環境を作ること」と「お薬での殺菌」です。
1. 耳の中を清潔にする(病院での洗浄)
まずは耳の洗浄液を使って、たまった耳垢をきれいに取り除きます。
※注意したいポイント: 綿棒などを使ってゴシゴシこすると、耳の粘膜を傷つけ、かえって悪化させてしまうことがあります。お家での正しいケア方法は、必ず獣医師に相談しましょう。
2. 点耳薬(お薬)の投与
キレイになった耳の中に、マラセチアをやっつける「抗真菌薬」が入った点耳薬を入れ、しっかり殺菌します。
3. 元にある「体質」のコントロール
アレルギーや脂漏症(しろうしょう)などの持病がある子の場合は、耳の治療だけでなく、体質に合わせたシャンプー(薬用シャンプー)の処方や、アレルギー用の療法食への切り替え、内服薬の投与などを並行して行い、根本からコントロールしていきます。
さいごに
目に見える皮膚の赤みや体調の変化にはすぐに気づけても、「耳の中」は意識して覗いてみないと気づきにくい場所です。
お家でのブラッシングやスキンシップの際には、ぜひ「耳のニオイ」を嗅いでみたり、中を優しくチェックしたりする習慣をつけてみてください。
外耳炎の強いかゆみや痛みは、言葉にできないペットたちにとって大きなストレスになります。「いつもより耳を気にしているな」と感じたら、ひどくなる前に、お早めに動物病院へご相談くださいね。
